漫録

哲学教師の日々の雑感です。

翻訳は新しいものがいいとは限らない。しかし、デュルケーム『宗教生活の基本形態』(ちくま学芸文庫)の新訳はいい。岩波文庫の訳に散見された誤訳が(私の見る限り)全部改善されている。
例)
旧:この当て外れが余りにしばしば異常なものと思われるようになる。
新:こうした失望はあまりにひんぱんに再現されるので、異常なものと思われなくなる。
原文:ces déceptions reviennent trop souvent pour nous apparaître extraordinaire.

旧:原始人は、自己の所為にされている推論について、咎められるはずはない。
新:彼に帰せられているような推論がなされることはありえない。
原文:il ne pouvait commettre le raisonnment qu'on lui impute.


この時代を画した古典的名著に、信頼にたる新訳が登場したことを寿ぎたい。