筒居康隆『文学部唯野教授』より。
「怒りを鎮めるため、唯野はさっそくその時の日根野の講義の真似をしはじめた。
「ふぁなあとらんさばりのあしぇっというん、やからんこぼんでのざんふぁんいうんをだしたがこれんはびゃくはちゅうろくえん。(以下略)」。
アナトール・フランスについての日根野の講義は実際にこのとおりだったのであり、これをえんえん一時間余も聞かされる学生は災難だが、こうした喋り方をする教授は大学において現実に二十人にひとりは存在し、…」
まるで真言である。ひょっとしたら、私の講義も学生の耳にはこのように聞こえているのかもしれない。